税金の基礎知識

日本の税金は約50種類。でも、あなたの手取りを決めているのは、ほんの数種類です。

税金の全体像から、所得税・住民税の計算のしくみ、控除の効き方、確定申告が必要な人の判定までを、一次情報(国税庁・財務省・総務省)にもとづいて1ページに整理しました。用語からではなく「自分の手取りがどう決まるか」から読めるように並べています。

先に結論:ここだけ押さえれば大枠は分かる

  1. 税金は「収入」ではなく「所得」にかかる。収入から経費(会社員は給与所得控除)を引いたものが所得です。
  2. さらに所得控除を引いた「課税所得」に税率をかける。だから控除を取りこぼすと、そのまま税金が増えます。
  3. 所得税は5%〜45%の段階制、住民税はほぼ一律10%。合わせて15%〜55%です。
  4. 手取りを削っているのは税金だけではない。社会保険料(約15%)のほうが重い人が大半です。

税金の全体像:国税と地方税、直接税と間接税

日本の税金は、国に納める国税と、都道府県・市区町村に納める地方税に分かれ、あわせて約50種類あります。分け方には3つの軸があり、同じ税金でもどの軸で見るかで呼び名が変わります。

軸1:誰に納めるか

国税(所得税・法人税・消費税・相続税など)と地方税(住民税・固定資産税・自動車税など)。地方税はさらに都道府県税と市区町村税に分かれます。

軸2:誰が負担し、誰が納めるか

負担する人と納める人が同じなのが直接税(所得税・住民税)、違うのが間接税(消費税・酒税・たばこ税)。買い物のときの消費税は、私たちが負担し、お店が納めています。

軸3:何にかかるか

所得課税(所得税・法人税・住民税)、消費課税(消費税・酒税・揮発油税)、資産課税等(相続税・固定資産税・印紙税)。財務省はこの3分類で税収を公表しています。

日本の税金(約50種類) 国税(国に納める) 地方税(自治体に納める) 所得課税 所得税・法人税 消費課税 消費税・酒税・揮発油税 資産課税等 相続税・印紙税 住民税・事業税 前年の所得にかかる 地方消費税 消費税10%のうち2.2% 固定資産税・自動車税 持っているとかかる
国税・地方税とも「所得・消費・資産」の3つのどこかにかかる。自分に効くのは左列(所得課税)が中心。
税金の種類区分何にかかる税率・金額の目安誰が払う
所得税国税・直接税個人のその年の所得5〜45%(7段階)+復興特別所得税2.1%働くすべての個人
住民税地方税・直接税個人の前年の所得所得割10% + 均等割5,000円前後1月1日時点の住民
消費税国税+地方税・間接税商品・サービスの消費10%(飲食料品等は軽減8%)消費者(事業者が納付)
法人税国税・直接税法人の所得(利益)原則23.2%(中小の年800万円以下は15%)会社・法人
個人事業税地方税・直接税個人事業の所得3〜5%(事業主控除290万円あり)法定業種の個人事業主
固定資産税地方税・直接税土地・家屋・償却資産標準1.4%(+都市計画税0.3%まで)1月1日時点の所有者
相続税国税・直接税相続でもらった財産10〜55%(基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人)財産を相続した人
贈与税国税・直接税もらった財産10〜55%(暦年課税は年110万円まで非課税)財産をもらった人
自動車税・軽自動車税地方税・直接税車の保有排気量等で年1万円台〜4月1日時点の所有者
印紙税国税・間接税契約書・領収書など文書の種類と金額で定額文書を作成した人

※ このほか酒税・たばこ税・揮発油税・入湯税・宿泊税など多数あります。税率・控除額は改正されるため、実際の判断前に国税庁・お住まいの自治体で最新をご確認ください。

所得税はこう決まる:収入 → 所得 → 課税所得 → 税額

所得税でいちばん大事なのは、税率をかける相手は「収入」ではないということです。年収500万円の会社員に500万円の税率がかかるわけではありません。次の4段階で絞り込んだ「課税所得」にかかります。

収入 給与・売上の総額 − 給与所得控除 /必要経費 所得 10種類に分類 − 所得控除 (15種類) 課税所得 ここに税率がかかる × 税率(5〜45%) 超過累進・速算表で計算 − 税額控除 住宅ローン控除・配当控除 = 納める所得税 源泉徴収済みなら差額を精算
節税の打ち手は、この図の「−」の3か所(経費・所得控除・税額控除)にしかない。

具体例:年収500万円の会社員(独身・社会保険料75万円)

  1. 収入 500万円
  2. − 給与所得控除 144万円 → 給与所得 356万円
  3. − 所得控除 基礎控除58万円+社会保険料控除75万円=133万円 → 課税所得 223万円
  4. × 税率 223万円 × 10% − 97,500円 = 所得税 125,500円(+復興特別所得税2.1%)

年収500万円に対して所得税は約12.6万円=実効税率は約2.5%。「年収の何%が税金か」は税率表の数字とはまったく違います。住民税(約23万円)と社会保険料(75万円)を足すと、手取りは約390万円前後になります。詳細シミュレーターで自分の数字を出す。

所得は10種類。分類が変わると税額が変わる

所得税法は所得を10種類に分けています。同じ100万円でも、どの所得に分類されるかで税金が変わります。副業の収入が事業所得か雑所得か、退職金をどう受け取るかが争点になるのはこのためです。

所得の種類代表例課税のしかた
給与所得会社員・パートの給料、賞与総合課税。給与所得控除を差し引く
事業所得個人事業・フリーランスの事業収入総合課税。経費を引ける・青色申告特別控除が使える
雑所得副業、公的年金、暗号資産、原稿料総合課税(公的年金等は別計算)。損益通算できない
不動産所得家賃収入、駐車場収入総合課税。赤字は他の所得と損益通算可(一部制限)
譲渡所得不動産・株式・車・金の売却益不動産・株式は分離課税、その他は総合課税
一時所得保険の満期金、懸賞、ふるさと納税の返礼品総合課税。50万円の特別控除後、さらに1/2
退職所得退職金分離課税。退職所得控除後に1/2(優遇が大きい)
利子所得預貯金の利息原則20.315%の源泉分離課税で完結
配当所得株式の配当、投資信託の分配金総合課税・申告分離課税・申告不要から選べる
山林所得山林の伐採・譲渡分離課税(5分5乗方式)
つまずきやすい点:「総合課税」は全部を合算して累進税率をかけるもの、「分離課税」はその所得だけ切り離して固定税率をかけるものです。株の利益が何億円でも20.315%で済むのに、給与は最大45%になるのは、この違いによります。

所得税の税率表(速算表)

所得税は超過累進税率です。課税所得が330万円を超えても、全額に20%がかかるわけではなく、超えた部分にだけ高い税率がかかります。速算表の「控除額」は、この段階計算をひと息で済ませるための調整額です。

課税される所得金額税率控除額税額の計算例
1,000円 〜 194.9万円5%0円150万円 → 75,000円
195万円 〜 329.9万円10%97,500円300万円 → 202,500円
330万円 〜 694.9万円20%427,500円500万円 → 572,500円
695万円 〜 899.9万円23%636,000円800万円 → 1,204,000円
900万円 〜 1,799.9万円33%1,536,000円1,200万円 → 2,424,000円
1,800万円 〜 3,999.9万円40%2,796,000円2,000万円 → 5,204,000円
4,000万円 以上45%4,796,000円5,000万円 → 17,704,000円

※ このほかに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が2037年分まで上乗せされます。住民税を足した実質的な限界税率は、最高で約55%です。

住民税:所得税と似て非なる、もうひとつの税金

住民税は所得税と計算の骨格は似ていますが、課税のタイミングと控除額が違います。ここを混同すると「退職した翌年に高額な請求が来て驚く」「ふるさと納税の上限を読み違える」といった事故が起きます。

比べる点所得税住民税
納め先国都道府県・市区町村
対象の所得その年の所得前年の所得(1年遅れ)
税率5〜45%の累進所得割 一律10%(都道府県4%+市区町村6%)
定額部分なし均等割 年5,000円前後(森林環境税1,000円を含む)
基礎控除58万円(本則・令和7年分〜)43万円(据え置き)
納め方源泉徴収/確定申告特別徴収(6月〜翌5月の給与天引き)/普通徴収(年4回)
「1年遅れ」が効いてくる場面

住民税は前年の所得に対して翌年6月から課税されます。そのため退職・独立・産休で収入が下がった翌年に、収入が高かった年の住民税が満額で請求されます。辞める前に、前年の源泉徴収票から翌年の住民税額(課税所得のおよそ10%)を見積もって、取り分けておくのが確実です。くわしくは住民税の仕組みと計算で解説しています。

所得控除の一覧:取りこぼしがそのまま増税になる

所得控除は課税所得そのものを減らすしくみです。軽減額は「控除額 × (所得税率+住民税10%)」なので、税率が高い人ほど効きます。会社員は年末調整で完結するものと、確定申告でしか受けられないものが分かれます。

控除の名前対象控除額の目安(所得税)受け方
基礎控除全員58万円(合計所得132万円以下は最大95万円)自動
社会保険料控除健康保険・年金の支払い支払った全額年末調整
生命保険料控除生命・介護医療・個人年金最大12万円年末調整
地震保険料控除地震保険最大5万円年末調整
小規模企業共済等掛金控除iDeCo・小規模企業共済支払った全額年末調整
配偶者控除・配偶者特別控除一定所得以下の配偶者最大38万円(納税者の所得で逓減)年末調整
扶養控除16歳以上の扶養親族38万円(特定扶養63万円・老人扶養48万円)年末調整
特定親族特別控除19〜22歳で所得要件を満たす親族最大63万円年末調整
障害者控除本人・扶養親族が障害者27万〜75万円年末調整
ひとり親控除・寡婦控除ひとり親・寡婦35万円/27万円年末調整
勤労学生控除働く学生(所得要件あり)27万円年末調整
医療費控除年10万円超の医療費最大200万円確定申告
寄附金控除ふるさと納税・認定NPOへの寄附寄附額 − 2,000円確定申告(ワンストップ特例なら不要)
雑損控除災害・盗難・横領の損害損失額に応じて確定申告
取りこぼしが多いのはこの3つ:①iDeCoの掛金を年末調整で出し忘れた ②別居の親に仕送りしていて扶養控除が使えるのに申告していない ③国民年金を子どもの分まで払っていて社会保険料控除に入れていない。いずれも確定申告で5年さかのぼって取り戻せます(会社員の確定申告ガイドに取り戻せる控除の一覧があります)。

所得控除と税額控除は、効き方がまったく違う

「控除」と名の付くものは2種類あり、同じ10万円の控除でも軽減額が変わります。税額控除のほうが強力です。

所得控除(課税所得を減らす)

軽減額 = 控除額 × 税率。税率10%の人が10万円の医療費控除を受けても、減る税金は所得税1万円+住民税1万円の計2万円です。税率が高い人ほど効きます。

税額控除(税額から直接引く)

軽減額 = 控除額そのもの。住宅ローン控除で20万円なら、税金が20万円減ります。税率に関係なく効くため、インパクトが大きいのが特徴です。

主な税額控除:住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)、配当控除、外国税額控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除。ふるさと納税の住民税分も、実質は税額控除として働きます。

税金より重いことが多い「社会保険料」

手取りの話をするなら、税金だけを見ていては足りません。会社員の給与から引かれるものの内訳は、多くの年収帯で社会保険料のほうが所得税より大きくなります。

引かれるもの料率の目安(本人負担)性格
健康保険料約5%(協会けんぽの本人負担分・都道府県別)社会保険
介護保険料(40歳以上)約0.8%社会保険
厚生年金保険料9.15%(上限あり)社会保険
雇用保険料0.55%前後(年度で変動)労働保険
所得税課税所得の5〜45%税金
住民税課税所得の約10%+均等割税金

社会保険料には所得税のような累進はなく、標準報酬月額の上限を超えると頭打ちになります。つまり中間層ほど負担率が高くなりやすい構造です。額面が上がっても手取りが思ったほど増えないと感じるのは、この定率負担が効いているためです。負担率の実額は詳細シミュレーターで確認できます。

確定申告が必要なのは誰か(30秒判定)

会社員は原則として年末調整で完結しますが、次に当てはまる人は確定申告が必要(または、したほうが得)です。

申告が必要な人

  • 個人事業主・フリーランスで所得が基礎控除額を超える
  • 給与以外の所得が年20万円を超える会社員(副業・不動産・暗号資産など)
  • 給与年収2,000万円を超える
  • 2か所以上から給与を受けている
  • 年の途中で退職し、年末調整を受けていない
  • 不動産・株式(一般口座)を売って利益が出た

必要ではないが、したほうが得な人

  • 医療費が年10万円を超えた(医療費控除)
  • ふるさと納税を6自治体以上にした/ワンストップ特例の申請を忘れた
  • 住宅ローンを組んだ初年度(住宅ローン控除)
  • 災害・盗難の被害を受けた(雑損控除)
  • 株で損をした(損失の繰越控除・3年間)
  • 年末調整で出し忘れた控除証明書がある
「20万円ルール」は住民税には無い

副業所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途必要です。ここを見落とすと申告漏れになります。仕組みは副業の確定申告で詳しく解説しています。

  1. 1年分の収入と経費(会社員は源泉徴収票)を集める
  2. 使える控除の証明書をそろえる(必要書類チェックリスト)
  3. 国税庁の確定申告書等作成コーナーで入力する(e-Taxの手順)
  4. 2月16日〜3月15日に提出する(還付申告は1月から可能)
  5. 納付する、または還付を受ける

よくある質問

所得税と住民税は何が違う?

所得税は国に納める税で、その年の所得に対して課されます。住民税は都道府県・市区町村に納める税で、原則として前年の所得をもとに翌年度に課されます。税率も違い、所得税は5〜45%の累進、住民税は所得割が一律10%+均等割が年5,000円前後です。基礎控除も所得税58万円に対し住民税43万円と差があります。

控除と経費はどう違う?

経費は事業の売上を得るためにかかった費用で、所得を計算する段階で差し引きます。控除は計算された所得や税額からさらに差し引くもので、所得控除と税額控除があります。会社員には経費の代わりに給与所得控除が自動で適用されます。

年収が上がって税率の段が変わると、手取りは減る?

減りません。所得税は超過累進で、段を超えた部分にだけ高い税率がかかるためです。課税所得が330万円を1円超えても、増える税金は数十円です。ただし社会保険の扶養(年収106万円・130万円)や児童手当の所得制限のように、境目で急に負担が変わる制度は別にあります。

日本の税金は何種類ある?

国税と地方税を合わせておよそ50種類あります。ただし個人の手取りに直接効くのは所得税・住民税・消費税・社会保険料(税ではありませんが同様に天引きされます)がほとんどで、まずこの4つを押さえれば大枠は掴めます。

確定申告を忘れていた分は、あとから取り戻せる?

還付を受けるための申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間さかのぼって提出できます。医療費控除やiDeCo・扶養控除の出し忘れは、5年以内なら取り戻せます。逆に納付が必要なのに申告していなかった場合は、早く自主的に申告するほど加算税が軽くなります。

参照元・公式情報

本ページは以下の公式情報をもとに作成しています。制度は毎年改正されます。実際の判断前に各公式サイトで最新をご確認ください。

※ 本ページの内容は情報提供を目的としており、税務・法務アドバイスではありません。個別の税務判断については、所轄の税務署または税理士にご相談ください。