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- 出典を報道から一次情報へ差し替え。こども家庭庁の令和9年度税制改正要望(見直し事項「09m_cfa_k_01」・財務省サイト)で、同庁みずからが「令和9年3月31日の適用期限の到来をもって、本特別措置を廃止する」と正式に要望していることを確認。廃止理由(近年は利用件数が低迷し、今後の利用増加も見込み難い)と、同日までの拠出分は引き続き適用できる旨も要望書の記述に置き換え。参考リンクに要望書PDFと財務省の要望一覧を追加(4言語)
本記事はこども家庭庁の令和9年度税制改正要望(見直し事項)と、国税庁・信託協会の公表資料に基づきます。所管するこども家庭庁はこの要望書で、「令和9年3月31日の適用期限の到来をもって、本特別措置を廃止する」と正式に求めています[こども家庭庁 見直し事項]。最終的な確定は年末の与党税制改正大綱です。数値はすべて出典つきで記載しています。
所管庁みずからが「廃止」を要望した——要望書で確認できる
こども家庭庁は、令和9年度税制改正の「見直し事項」(=廃止・縮減を求める項目)に、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置を挙げました。要望の内容は次のとおりです[こども家庭庁 見直し事項]。
「令和9年3月31日の適用期限の到来をもって、本特別措置を廃止するとともに、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本特別措置を適用できることとする。」
この制度の適用期限はもともと2027年(令和9年)3月31日です。つまり要望の中身は、期限どおりに終了させ、延長しないというものです。すでに拠出した分はそのまま使えることも、同じ一文で明記されています。
廃止を求める理由も、要望書に書かれています。「本特別措置の創設以降、高齢者が保有する資産について、若年世代への移転を促すことで一定の役割を果たしてきたものの、近年は利用件数が低迷しており、今後の利用増加も見込み難い状況である」。
所管庁が自分で廃止を要望するのは、事実上の廃止決定にかなり近い動きです。通常の税制改正は「省庁が8月末に要望→年末の与党税制改正大綱で採否」という流れで、延長要望が通らないことは珍しくありません。しかし今回は、延長を求めないどころか、所管庁が廃止そのものを要望しています(正式な確定は年末の大綱)。この流れの読み方は令和9年度税制改正要望の読み方で解説しています。
制度のおさらい——1,000万円まで非課税、ただし条件と「後始末」つき
結婚・子育て資金の一括贈与は、2015年(平成27年)4月に始まった制度です。親や祖父母(直系尊属)が、信託銀行などの専用口座を通じて子・孫に資金をまとめて渡すと、受贈者1人あたり1,000万円まで贈与税が非課税になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 贈与する人 | 父母・祖父母など直系尊属 |
| 受け取る人 | 18歳以上50歳未満の子・孫(前年の合計所得1,000万円以下) |
| 非課税枠 | 受贈者1人あたり1,000万円(結婚関係の費用は300万円まで) |
| 対象になる費用 | 挙式・披露宴、新居の家賃・敷金や引越費用(期間・上限あり)、不妊治療・妊婦健診・出産、産後ケア、子どもの医療費、幼稚園・保育園の保育料など |
| 手続き | 信託銀行など金融機関に専用口座を開設し、領収書を提出して払い出す |
| 期限 | 2027年3月31日までの拠出分が対象(令和7年度改正で2年延長された分) |
見落とされがちなのが「後始末」の課税です。
- 50歳になった時点の残額には贈与税がかかります(2023年4月以後の拠出分は税率の高い一般税率)。
- 贈与した人が亡くなると、使い残し(管理残額)は相続財産に加算されて相続税の対象になります。孫が受け取っていた場合、2021年4月以後の拠出分は相続税の2割加算の対象にもなります。
つまり「渡し切って相続税を減らす」効果は、教育資金版に比べても小さく設計されています。
なぜ「効果が限定的」なのか——数字と仕組みの両面から
要望書が挙げた「近年は利用件数が低迷」という理由は、公表データで裏づけられます。
- 利用が極端に少ない。信託協会の統計では、結婚・子育て支援信託の契約数は創設から約10年で累計7,907件(令和6年9月末)。同じ一括贈与でも教育資金版は累計約27万件で、約34倍の差があります。1年あたりに直すと全国で800件程度しか使われていません。
- そもそも、その都度の援助なら最初から非課税。親や祖父母(扶養義務者)が、結婚式の費用や出産費用、保育料などを必要になったつど直接払うのは、通常必要と認められる範囲なら贈与税の対象になりません(国税庁タックスアンサー No.4405)。「一括で前渡しする」ことにしか意味がない制度なので、出番が限られます。
- 相続税対策としても中途半端。前述のとおり、使い残しは相続財産に加算され、孫は2割加算まであります。相続直前の駆け込み贈与の抜け道にならないよう設計された結果、節税メリットが薄くなりました。
- 手間がかかる。専用口座の開設、費目ごとの領収書提出、結婚費用は300万円までという内枠管理など、事務負担のわりに得られるものが少ないのが実情です。
教育資金版(1,500万円)が約27万件も使われたのは、「入学金や授業料をまとめて祖父母が出す」需要が現実に大きかったからです。結婚・子育て版は需要の中心が「都度払いで足りるお金」だったため、10年間、利用が伸びませんでした。廃止は利用実態から見れば自然な流れといえます。
「一括贈与の非課税」は店じまいの流れ——3制度の現在地
| 制度 | 非課税枠 | 状況 |
|---|---|---|
| 教育資金の一括贈与 | 1,500万円 | 2026年3月31日で終了済み(延長要望が通らず) |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円 | 2027年3月31日で終了へ(こども家庭庁が廃止を要望) |
| 住宅取得等資金の贈与 | 省エネ等住宅1,000万円・その他500万円 | 適用期限は2026年12月31日(現時点で存続中) |
教育資金版の終了の経緯は教育資金の一括贈与はいつまで?で詳しく解説しています。背景には、暦年贈与の持ち戻し期間の7年への延長や相続時精算課税の年110万円基礎控除の新設(いずれも2024年〜)など、「贈与と相続をまとめて課税し直す」方向の税制再編があります。期限つきの一括贈与特例は、順に店じまいが進んでいると見るのが自然です。
廃止で困る人・困らない人——そして代わりの手段
ほとんどの家庭は困りません。結婚式の費用や出産費用、保育料を親がその都度負担するのは、これまでどおり贈与税の対象外だからです。影響があるのは、次のようなケースに限られます。
- 高齢の祖父母が、元気なうちにまとめて孫の結婚・子育て資金を確保しておきたい(都度払いは自分の健康状態に左右されるため)
- 相続人ではない孫へ、記録が残る形で計画的に資金を移したい
こうした目的がある場合の選択肢を整理します。
- 都度贈与(原則これで足りる):結婚・出産・保育の費用を必要なタイミングで直接払う。金額の上限はなく、通常必要な範囲なら非課税です。
- 暦年贈与110万円:年110万円までの基礎控除内で毎年渡す。相続開始前7年分は相続財産に持ち戻されますが、相続や遺贈で財産を受け取らない孫への贈与は原則として持ち戻しの対象外で、相性がよい方法です。詳しくは贈与税の非課税枠110万円の使い方へ。
- 相続時精算課税:2024年からは年110万円の基礎控除が新設され、110万円以下なら申告も持ち戻しも不要になりました。まとまった額を早めに移したい場合の選択肢です。
- 駆け込みで本制度を使う:2027年3月31日までは信託銀行等で契約できます。ただし上で見たとおり、50歳時の残額課税・死亡時の管理残額加算・領収書管理の手間があるため、「非課税だからお得」と飛びつく制度ではありません。使うなら残額が出ない金額設計にし、税理士に相談を。
なお、住宅資金の援助を検討している場合は、住宅取得等資金の贈与非課税(2026年12月31日期限)が別枠で残っています。住宅ローン控除ガイドとあわせて確認してください。
まとめ
- こども家庭庁が、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置を2027年3月31日の期限で廃止するよう要望。確定は年末の与党税制改正大綱
- 制度は1,000万円まで非課税(結婚費用は300万円まで)だが、50歳時の残額に贈与税、死亡時の使い残しに相続税がかかる
- 利用は創設から約10年で累計7,907件。教育資金版(約27万件)の約34分の1
- 結婚式・出産・保育料をその都度親が払うのはもともと非課税。ほとんどの家庭は廃止で困らない
- まとまった額を渡したいなら暦年贈与110万円か相続時精算課税(年110万円の基礎控除)と比べる
参考リンク(出典)
本記事は一般的な情報提供であり、特定の手続き・節税を勧めるものではありません。廃止はこども家庭庁が要望した段階であり、年末の与党税制改正大綱までは変更の可能性があります。個別の税務判断は税務署または税理士など専門家にご確認ください。
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